2020年3月10日火曜日

ビタミンで新型コロナ対策

オーソモレキュラー医学の挑戦

 2020年03月09日 19:06
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 3月3日に東京都で国際オーソモレキュラー医学会の報道関係者向け説明会が開かれた。同医学会会長の柳澤厚生氏は、ビタミンCなどの栄養素の投与による新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策の可能性について展望した(関連記事:「オーソモレキュラー医学会が初総会」)。

日ごろ摂取する栄養素が鍵

 オーソモレキュラー医学とは、人間の体の中に自然に存在するビタミン、ミネラル、アミノ酸など適切な栄養素を分子レベルで最適な量だけ投与し、病気の予防や治療を行う医学だ。COVID-19は新型ウイルスによるものであるためエビデンスこそないが、柳澤氏はこれまでのオーソモレキュラー医学の成果からCOVID-19対策についての展望を示した。
 同氏は「一般的な感染症では、感染しても無症状な人もいれば重症な人もいる。特に重症例は高齢者や基礎疾患のある人に遍在する。これは、個々の栄養状態、免疫力などの違いによる。通常のウイルス感染では、栄養バランスが保たれ、十分な睡眠と休養が取れており、そして免疫力が健常であれば感染は予防でき、仮に感染しても軽症となりやすい。COVID-19については治療経験がないが、これまでの研究を基に対応したい」と話した。

ビタミンC、ビタミンD3、亜鉛に感染予防のエビデンス

 国際オーソモレキュラー医学会では、COVID-19予防と重症化を防ぐために次のサプリメント摂取を推奨している。1日の推奨摂取量と合わせてそれぞれ、ビタミンC 3g、ビタミンD3 2,000IU、亜鉛 20mg、セレン 100μg、マグネシウム 400mgだ。柳澤氏は「特にビタミンC、ビタミンD3、亜鉛の摂取は重要だ」と話し、過去の臨床試験結果を次のように説明した。
・ビタミンC:1990年にチリのサンチャゴ市の合宿所で10日間の運動プログラムに参加する学生の感冒症状に対し、ビタミンC介入試験を実施した。その結果、対症療法のみの対照群に比べ、 ビタミンC投与群で感冒とインフルエンザの症状は85%軽減した。解熱剤や感冒薬を服用した場合よりも、最初の6時間はビタミンC1gを1時間ごとに6回、以後1日3回投与することでかぜとインフルエンザの症状が緩和し、また症状の予防ができたのだ(図1、J Manipulative Physiol Ther 1999; 22: 530-533
図1. ビタミンCのウイルス性呼吸器感染に対する予防・症状軽減効果
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・ビタミンD:米・エール大学で、2009年9〜12月、健康成人198人を対象として1カ月ごとに血清25-(OH)ビタミンD を測定した。その結果、25-(OH)ビタミンD値が38ng/mL未満に比べ、同以上の被験者では急性ウイルス性呼吸器感染症の感染者は3件のみであり、罹患リスクは3分の1に減少 (P<0.0001)。また罹患日数が大幅に短縮したPLOS One 2010; 14: 5: e11088
・亜鉛:フランスの2つのクリニックで、感冒で来院した患者にプラセボもしくはビタミンC1g+亜鉛10mgを5日間投与する研究が実施された。その結果、ビタミンC1g+亜鉛群で感冒症状の有意な早期改善が認められた(図2、J Intern Med Res 2012; 40: 28-42
図2. ビタミンC+亜鉛の感冒に対する効果
25114_fig2.jpg
(図1、2とも説明会発表資料を基に編集部作成)
 中でもビタミンCはこれまでインフルエンザ、肺炎、ポリオなどほぼ全てのウイルスに有効だった。同医学会では、COVID-19患者には、基本的治療に加えて、医療機関におけるビタミンC点滴とサプリメント摂取を推奨するという。重症敗血症、敗血症性ショックにおけるビタミンCの効果も臨床試験から明らかになっているChest 2017; 151: 1229-1238

中国で高濃度ビタミンC点滴の臨床試験

 実際に、2月11日付で中国・武漢大学付属中南病院は、COVID-19による重症肺炎患者の治療に1日24gのビタミンC点滴を併用する臨床試験を開始することを発表した。また、2月17日付で中国・西安交通大学付属病院もCOVID-19による重症肺炎患者の治療に高濃度ビタミンC点滴を併用する臨床試験を開始すると発表しているという。
 説明会の最後に柳澤氏は「今まで栄養関係の論文を執筆してきた先生方にも、この有事の機会だからこそ、リベラルな声を現場に発信していってほしい」と述べた。